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カテゴリ:即興詩

  • 「愛の標識」
    [ 2012-05-18 18:09 ]
  • 朝のこゆび
    [ 2012-05-08 23:58 ]
  • 午後の動脈
    [ 2012-05-01 14:25 ]
  • 春のあとさき
    [ 2012-03-27 15:39 ]
  • 『Re:朝』
    [ 2011-12-07 19:03 ]
  • 『ご近所の果て』
    [ 2011-11-21 16:03 ]
  • 口をへの字にしてさあ
    [ 2011-04-23 21:54 ]
  • 日々の止まり木
    [ 2011-04-21 17:22 ]
  • 携帯から即興
    [ 2011-03-21 18:22 ]
  • 携帯から即興
    [ 2011-03-20 17:12 ]

 

「愛の標識」


愛の標識みたいなもんを探していたのは誰でしょうか
今はそこらじゅうに見えるから珍しくもない
あの愛の標識までとりあえず手をつないで走ろうか
目的地に着いたらこの手を離してバイバイ
しよう

不安のない毎日が不安ですときみがいう
不安のない毎日を不安と呼ぶきみがぼくは不安です
あのときはそうおもった
あの春はそうおもった

歳をとってわかるようになった気持ちより
歳をとってわからなくなった気持ちが羨ましい
走ることに理由をでっちあげるのが上手で
理由がなくなった瞬間にもう走れなくなる

愛の標識みたいなもんを探していたのは誰でしょうか
今はそこらじゅうに見えるから珍しくもない
あの愛の標識までとりあえず手をつないで走ろうか
目的地に着いたらこの手を離してバイバイ
しよう

不安のない毎日が不安ですとぼくはいう
不安のない毎日を不安と呼ぶぼくがきみには不安です
このごろはそうおもって
この春はそうおもって

十代のあやふやな恋愛模様おもいだす
二十代もあやふやな恋愛模様繰り返す

愛していますとスキの二択ならこんなに苦しくなかったのになぁ
愛しているよも嫌いじゃないよもアイラブユーもウォーアイニ―も
真綿にくるんで投げ捨てた
国道の向こうに投げ捨てた
絶対に壊れないから振り返る必要を認めない

愛の標識みたいなもんを探していたのは誰でしょうか
今はそこらじゅうに見えるから珍しくもない
あの愛の標識までとりあえず手をつないで走ろうか
目的地に着いたらこの手を離してバイバイ
する?


 

クリープハイプ「愛の標識」に、愛をこめて

 

 

by chori_poet | 2012-05-18 18:09 | 即興詩 

朝のこゆび


ちぎり捨てたもののおもみを
きみの指は知っているか

そのやわさや
ぬくんでふうわりと色づいた甘さを
かたくこわばった四隅のひやっこさを
憶えてはいないか

どうだろう、と腹がいう
丸くちびた爪はおもいあたるようなことをつぶやいて黙りこむ
こんなにもごつごつとふしくれだった関節が
遠いまなざしを夜のむこうへ投げる

投げられた
おもみは

つかの間
春の緩衝地帯へ打ちあたり
受け身のとれないまま
ひとしきりその身をよじっ


こゆび
朝の家禽たちに
ついばまれるための
小指
その糸の先を握っているのは
きみか
あるいはぼくか

糸は
ぼくか。

それとも、


  

by chori_poet | 2012-05-08 23:58 | 即興詩 

午後の動脈


ゴールデンウィーク初日の
どこかそそっかしい日差しに撫でられて
午後の動脈がぷつぷつと音をたてて鳴った

sanjo-ohashiの東詰で
「イエス様を信じましょう」
「永遠の命が与えられます」
とやっている
善男善女の群れを
反対側から弥次喜多がけだるそうに眺めており

橋を渡りきるあいだ
ひとしきりコラージュして遊んだ
「角のローソンでコカ・コーラを買いましょう」
「イエス様が与えられます」
「先着何名様に」
「かなりの高倍率ですが」
「Judas!」
とロイヤル・アルバート・ホールで叫んだ男の名前をぼくは知らないが
叫ばれた男の名前は知っている
How does it feel?

駿州で身上を持ち崩して江戸へ夜逃げしてきた弥次さんと
弥次さんの陰間たる喜多さんの
ぐるりとひとまわりした逃避行のアガリはここであり
人生ゲームならアガリの手前には決まって開拓地があるのだ
思想のぶ厚い皮膚をつきやぶって
逃げ切れるものなら...

 (...Once upon a time you dressed so fine

いま
2012年の春
一向宗徒の増田くんが奉行したこの橋上で
大工の息子を与えたり与えられたりする一団が叫ぶ
コカ・コーラもすぐぬるむような
いい日和だ
この橋を渡りきればゴール
ユダは等間隔カップルのなかで息をひそめ
ぼくはペテロのかわりに
「Domine, quo vadis?」とつぶやく

 

by chori_poet | 2012-05-01 14:25 | 即興詩 

春のあとさき


伏見桃山駅前のフレスコまで
ゆっくり歩いて、まあ
きみとのことを七回くらいおもいだせる距離だ
事実と記録のうえに
都合のいい記憶を重ね着して
もう肌寒くはない

昼間のビデオワンは
あれは嘘だね
潜ってるのさ
それでも
日が暮れるとてらてら回りだすネオンは
光に乏しいこの街の
安っぽいエレクトリカルパレードみたいで

うしろから自転車がぼくを追い越す
彼は中書島へ
ぼくは右へ折れて―――舗道を叩くこの足のどこかにまだきみが残っていないか
ちょっと確かめたりしてる

思い出のほつれから
スローモーションでこぼれ落ちてゆく
なにかしらの涙
陽気な春のアスファルトをまっすぐ濡らして
そら白洋舎だ
洗濯には
出せないものばっかりだ

いつか、このフレスコで
なんでもカゴに放り込んでしまうものだから
きみはだんだん不機嫌になってゆく
そのちょっとばかしぶさいくなふくれっ面を
愛しい、とおもったときがあったろう

発泡酒とコーヒー豆を買って
おとなしく帰る

今度はちがう道

高架下アドベンチャー
ぼくはそう呼ぶ
右も左も
なんなら上も下も
冷たいコンクリートが
延々とつづく変わり映えのしない景色
きっときみのこころに描かれたぼくも似ているだろう
そのあたりに
きみの死体が転がっていないか妄想する
白いチョークできっかりふちどられたぎっちょのきみの身体
謎は謎のまま
ぼくは高架を抜ける

家の近くにある団地の公園で
若い男の子たちが野球をしていた―――明治初年のべえすぼおる、といった態で
ばらばらのユニフォーム、ジャージ、シャツが
青、みどり、白、きらきらと
洗濯機のなかをまわるように
塁上を駆けてゆく

何回の表だか裏だかわからないまま
痛烈なゴロをサードが横っ飛びでグラブにおさめた
その瞬間に
ぼくの記憶もどこかへ仕舞われた

ゲーム・セットだ

半透明の買い物袋から
発泡酒を一本取り出してプルタブを開ける
また
濡らすための口実ができてしまった

じんわりと温い太陽の射す午後
春のあとさきに挟まれたまま
ぼくは本塁に帰れなかった走者のような顔をして
五パーセントのアルコールを喉へ流しこむ


  

by chori_poet | 2012-03-27 15:39 | 即興詩 

『Re:朝』

いつもは全然さえないきみの
寝顔が安藤裕子そっくりだったから
ちょっとびっくりした
阪急電車の走る音が
きこえる街の小さなベッドで

生きながらにして死んでゆく
そんなことの意味がすこしだけわかる
そういうことしたあとのベッドで

きみがいつだったか切った手首や
きみがいつだったか切った太ももの
血がかわいてこびりついた
世界地図みたいなベッドで
ぼくら無傷のままで血を流した
とてもなつかしい
冬のにおいがする




by chori_poet | 2011-12-07 19:03 | 即興詩 

『ご近所の果て』



帰り道ぼんやり夏をつれてさ
サンダルの音はふたりぶん
つかず離れずつかず離れず
ご近所の果てまでつながってったっけ

遮断機の向こうとこちら側との
何秒間かでゆれる空気は
うすくうすく薄く練り込まれて
忘れちまった約束のようだよ

オレンジ色、スーパーの袋
きみは左手に提げてさ
おんなじ色、スーパーの袋
ぼくの右手にもあるもんさ

空いたままの反対の手と手
宙ぶらりんを横切って消える

影を踏んで歩こう
影を踏んで歩こうぜ
どうやらきみには追いつけないけど

高い空、夕暮れ てのひらでふたをしたんだ
こぼれた隙間にぼくらうまくはまれないまま

高い空、夕暮れ てのひらでふたをしたんだ…


オレンジ色、スーパーの袋
きみの左手ゆらすのは
おんなじ色、スーパーの袋
ぼくの右手使えなくするのは

影を踏んで歩こう
影を踏んで歩こうぜ
どうやらきみには追いつけないけど

高い空、夕暮れ てのひらでふたをしたんだ…


                  

by chori_poet | 2011-11-21 16:03 | 即興詩 

口をへの字にしてさあ


会いたいとか会いたくないとか
たのしい話でおしまいさ

by chori_poet | 2011-04-23 21:54 | 即興詩 

日々の止まり木



by chori_poet | 2011-04-21 17:22 | 即興詩 

携帯から即興



薬指のさかむけを齧りとって食べた
ちいさな夜の公園
沈丁花のあいだに隠れてあそんだ
きみを抱くときはだいたいかなしい




by chori_poet | 2011-03-21 18:22 | 即興詩 

携帯から即興


ガラス製の水差しのむこうで
やんわりと夜がゆれている
生温い夜だ
きのうよりほんの少しだけ
持ち重りのする夜だ

地層のように複雑に入り組んだ不安のうえへ
ぼくらは寝そべっている
四畳半の宇宙

ガラスは
いつか砕けるだろう
化石になったぼくやきみが
掘り起こされるのは
いったい何世紀後の話だろうか



by chori_poet | 2011-03-20 17:12 | 即興詩