人生に必要なものは
ディランと王陽明とマヤコフスキーが教えてくれた
とか嘘
暮れなずむ阪急東通り商店街
アーケードのさらに軒下を拾い歩き
やっぱ都落ちだよな
おもわず口に出しちゃったみたいで
買い物途中の大阪のおばちゃんにしばかれた
これも嘘
拝啓マヤコフスキー
未来なんてもう転がってないぜ
拝啓王陽明
知ってから行うんじゃもう遅いらしいぜ
拝啓ボブ・ディラン
この世界では
風すら淀んでるんだぜ
すべての死んでった友人にピースを
強い酒が飲みたくなって
なんでもいいからそこらへんの居酒屋に入ってなんか飲んだ
とりあえず飲んだ
なにを飲んだかよりも
飲んだことが重要
身体を大事にしろよとか言われるけど
ぼくは二十歳からあとは晩年だとおもうんだ
すくなくとも世紀末に生まれて
二十一世紀を生きざるをえないぼくらの
路上に仮借できない青春を
ここでかりにイノセンスと呼ぶことにしよう
二次元とか萌えが堂々とサブカル化したのは
要するにイノセンスを経過しなかった不純物の発露だ
にきびづらした童貞中学生が
朝目がさめたら社会人になってたみたいなもんだ
これはちょっとした恥じらい
要するにパッケージングしてみただけ
いくらなんでもこれはセンスのない言い回しだ
一億五千万のリアリズムが
マヤコフスキーの手に拳銃を握らせたのと
おんなじくらいのスピードで
若者は恋に落ち 恋に破れ 就職活動に精を出し
サークルの運営会議で頭を抱える
うつくしい音楽の背後で静かにノイズが這いずりだす!
誰にも聞こえない可愛らしいノイズが!
ぼくらはみんな自分のつくった精神病院に名札をかけて
ディランを待つウディ・ガスリーを夢見る
理性に惹起されたイノセンス
阪急東通り商店街に立ち並ぶネットカフェで
誰もが誰かとつながってる音がする
あるときは光ファイバーをとおして
あるときはカップルシートで
ぼくはなぜ大阪にくるたびこんなことを考えているのだろう
都落ちだもんな
とつぶやいた瞬間
すべてのネットワークを断ち切って!
世間のあらゆる四捨五入を切り捨てて!
通天閣が炎を吹き上げながらまっぱだかで燃え落ちる!!!
ぼくの目には
たしかにそう見えた
なんでディランで王陽明でマヤコフスキーかというと
なんとなくイノセンスだとおもったから
悠久たる数字とウンチクに阻まれて
今は誰がなんといおうと二十一世紀です
ぼくはまだ全然掴めてない
詩人というほどのたいそうなことばは
さっきうんこをしたときに流してしまった
舞台裏もふくめての
お代は見てのお帰り
京都までたどりつくための390円を
ただ なんに使おうかなって話
とりあえず酒を飲んだ
それでなくなった
だからこの話はもうおしまい
純粋であるということは
必ずしも青春とリンクしない
だからよけいに厄介だ
自分探しだの言えるうちはよかった
探すほどの自分なんて残っていないと
気づいてしまったぼくらにとってはなおさら
イノセンス
のセンスが足りないのだ
きっと
ぼくも少年Aも少女Aも犬Aも街Aも景色Aも記憶Aも
つながらないかぎりBなんか出てこないぜ
イノセンスってやつを
ルクルーゼに注ぎ込んだら
あっというまにふきこぼれて火が消えた
そろそろ
生きることに意味なんかつけなくていいころだ
アホはアホなりに 勤勉は勤勉なりに
転がっていくしかないんだぜ
と
生き残ったボブ・ディランが歌って
すこしげんなりした
厳然としてそびえたつ通天閣をみあげる
みえるはずのないアーケードの向こうに
きのうまで知らなかった風景がある
ズボンを履いた雲が うすぼんやり流れてゆく
by chori_poet | 2007-11-27 00:13 |
詩